継げる.ocm 継承メディア BUSINESS BATON

片田舎発!“スローなものづくり”で価値創造【工房織座】(3/3)

  • [レポート]

◆工房織座の“ものづくり”◆

3回目はヒットを生み出す
“ものづくり”について聞いてみましょう。

1回目 2回目の記事も合わせてお読みください)

工房織座では
『KARAMI(カラミ)』
『I+O(イト)』という
ブランドを展開しています。

 

●『KARAMI』について

まず、『KARAMI』です。

こちらは社長の哲学がダイレクトに
反映されたブランドと言えるでしょう。

g-12[1]

 

工房織座では、工房と同じ敷地に
かわいいファクトリーショップがあります。

そこに買いに来てくれたお客さんの声を直接聞きながら、
商品作りをしています。

IMG_4551

IMG_4634 - コピー

 

ここで記者なりに、
社長のものづくりの姿勢をまとめてみました。

①自前主義

織機の復元と改造からしてそうなのですが、
できる限り自分たちの手でやろうという
意識を感じます。

工房織座では、
糸を捻って製造することまで
社内でできてしまいます。

ここまでできる会社は、
繊維産業が盛んな今治の中でも珍しいとか。

もともとは、
織座から糸の専門業者への注文をすると、
どうしても小ロットになってしまい、
先方に嫌がられたためのようです。

そのため、
自社で糸の生産まで手がけるようになり、
結果、面白い糸を使えるようになりました。

IMG_4607 - コピー

社長は
「アイテムをマフラーなどに絞って良かった」
といいます。

その理由も、
外注を使わなくて済むから、と。

自前主義と絞込みが、
相乗効果を生んでいるようです。

 

②プロダクトアウト

ものづくりの発想として、
消費者のニーズ等に合わせて作るマーケットインと、
自社本位でものを作るプロダクトアウトがあります。

どちらかといえば工房織座の場合、
後者のようです。

「百貨店に並んでいる商品を見て、
マネして作るようなことはしない」
と社長は言います。

では、どうやって作るのでしょうか。

「ウチの機械ならばこんなことができないか、
あんなことができないか、
と色々試しながら作っています」と。

古い機械ならではの可能性を活かす方向で、
商品作りを進めているのです。

なお、今治だからといって
綿ばかりにこだわることはないといいます。

天然素材にはこだわるものの、
いいアイテムを作るために
他の素材を使うことに抵抗はないそうです。

 

③ゆっくり作る

100年前の機械でゆっくり作ります。

だからこその特徴が工房織座の商品にはあります。

いまどきの高速織機は、
細くて強い糸で織るため、
均一な平らな織物が作られるのが一般的です。

ところが、こちらは古い機械でゆっくり織るので、
特殊な糸を織り込むことができます。

そして空気を含みながらゆっくり織る為、
表面がボコボコしたような、
手作りの味がある布が織れます。

IMG_4643 - コピー
味わいを生む、“うねり”が伝わりますか?

IMG_4644 - コピー
複雑な織りの構造を説明していただきました

 

また、高速機械では、
出来上がった生地の両端を裁断し、
折ってミシンで縫います。

そうしなければほつれてしまうのです。

でも工房織座の機械ならば、
両端を裁断しないで済みます。

結果、折り曲げて縫う必要がないから、
より柔らかなアイテムとなります。

 

機械の性能上、
早くたくさん作ることができません。

この点に対し、社長は

「たくさん作れないことが強み」だ、
と不思議なことをおっしゃります。

「たくさん作れば、
たくさん売らなければならないから、
値下げも必要になる。

でも、ウチの場合はその必要はない」と。

早く、正確に、たくさん作る。

これまで当たり前に
“良いこと”と思い込まれていたものが、
実はもう違っているのかもしれません。

 

 

●『I+O』について

もう一つのブランド『I+O』

itohp2[1]

 

娘の英里子さん主導で立上げたブランドです。

立ち上げた動機については、
「カラミの商品では、
若者やとがったアイテムを好む層に
アプローチできないと思ったためです。

そしてもうひとつは、
メディアなどで取り上げられるものづくりを見て、
『ウチだって面白い織ができる』と
納得いかなかったからです」と。

負けん気の強さと、
お父さんの織を広めたい熱意が感じられます。

IMG_4592 - コピー

 

そんな想いを証明するための『I+O』です。

今回は外部のデザイナーを使うことにしました。

「自分たちが分からない領域を
やるのだから外部の力が必要だ」
と考えたそうです。

 

これに対し、自前主義を好む社長です。

「外部の人間を入れることに対して
正直抵抗はあった」
と言います。

それでも、
「補助金まで取っちゃったから(笑)
やるしかない状況にしちゃいました」
と英里子さんはブランド立ち上げを進めます。

 

デザイナーに任せたから
売れる商品ができるというわけではありません。

有名なデザイナーを起用しても失敗した、
と言うケースをよく聞きます。

今回の『I+O』の成功は、
当初の思惑にブレがなかったところが要因だと、
記者は思いました。

 

英里子さんは、
新ブランドにつきこう考えていました。

ありえない色を世に出す。

エッジの効いたブランドを作る。

このあたりの想いを曲げなかったのです。

 

たとえばデザイナー選び。

SPREADというクリエイティブユニットを
起用しました。

ただ彼らがこれまで主に扱ってきたのは
グラフィックデザインです。

「製品はほぼ経験が無い」ということです。

普通に考えたら
「プロダクトデザインの経験がある
デザイナーのほうが無難」
と考えてもよさそうな気がします。

でも英里子さんは、
「ありえない色を出すためにやるのだから、
それでいい。
SPREADさんは、こういうのやってみたかった、
と一緒に面白がってくれたのが良かった」
と言います。

『世になかったものを作る』
という軸を貫いているのです。

 

IMG_4641 - コピー
一言では表現できない、複雑な色あいです

 

その後の商品作りにおいても、
当初の狙いはブレません。

手堅く売れそうなアイテムは
別にあることは分かりつつも、
『驚きを与えるブランド』としての姿勢は
崩さなかったのです。

そうしてキレを保てたことで、
ブランドはさまざまな人の目に留まりました。

あの中川政七商店との取引が始まり、
メディアでの露出も増えました。

(中川政七商店社長の
インタビュー記事は、こちら

 

『I+O』というブランドは
売上への貢献もさることながら、
工房織座の存在感を示すことに
強く貢献したのではないでしょうか。

 

ちなみに、初の外部デザイナーの起用に
社長の感想は・・・

「色について妥協がない。

だからこちらが応えるのは大変だった。

自分の都合でできないからね(笑)」

と語ります。

 

IMG_4590 - コピー

いろいろ苦労もあったことが伺えますが、
工房のものづくりの実力を
高める経験にもなったのかもしれません。

 

ブランドの方向性の手綱は
こっちでしっかり持つ。

しかし、デザイナーの領域については尊重し、
リクエストに必死で応える。

こんな外部パートナーとの関係がいいのでしょう。

 

 

◆これからの工房織座◆

将来の工房織座の姿について、
お二人はどのように考えているのでしょうか?

「あまり大きくすることを求めていない。

それよりはクォリティーを高めたい」と社長。

「ブランド価値をUPしたい」
と英里子さんも語ります。

やはり会社立上げのときと変わらず、
サイズや量ではなく、
質へのこだわりがあるようです。

 

「ストールを通じて、
今治にたくさんの人が
遊びに来てくれるといいな」
と英里子さんは夢を語ります。

現地に出向いて売る、ではなく、
買いに来ていただく。

これってとても
素敵なことだと思いました。

作り手は、お客さんが足を運んででも
手に入れたいアイテムを作る。

お客さんは製造者と触れ合いながら、
本当に欲しいものを手に入れる。

なにか買い物の究極的な喜びが
そこにあるように感じるのです。

IMG_4545
工房織座の周辺の風景

 

《取材後記》

きれいな川のふもとののどかな集落。

こんなところで、
世間から注目されるものづくりをしていました。

うらやましいのは、
その仕事までも含めた生活スタイルです。

社長はものづくりだけでなく、
仕事の合間に庭いじりもすれば、
釣りに出かけることもあると。

人間本来の生活リズムやバランスを
保ちながら暮らしていらっしゃる
ように感じました。

 

【お知らせ】

工房織座のアイテムはこちらから購入できます。

温かみに溢れた作品を 是非チェックしてみてください。

工房織座オンラインショップ

 

BB編集部だより

  • FireShot Capture 11 - 『事業承継・廃業相談室』社長交代から後継者さがし、相続、事業譲渡まで – 社長のおくりびと奥村聡が事業_ - http___syoukei-lab.com_

    事業承継・廃業相談室を開設!

    新サイトの『事業承継・廃業相談室』をオープンしました!
    子供から第三者への承継、社長の相続、廃業と・・・会社経営の出口の場面のリアルなところをお伝えできればと思っています。
    (奥村)

     

  • 12625871_675680302535743_681456829_n

    2月20日の赤穂イベントが朝日新聞に

    2月20日に開催される、僕らの「出張例会と赤穂ツアー」の紹介が朝日新聞で掲載されました。他の地域と濃く交われる機会です。参加いただいた方に何か新しいことが生まれる機会になりますように。

  • P1250557

    空き家、空き店舗について講演

    奥村は、不動産業者さんの集まりで講演をさせていただきました。「街の個性を守る」ことをお願いしてきました。どこの街も同じ風景になりつつあるなか、できるだけ今あるものを活かしていくことが大切ではないでしょうか。

  • リノベラー!書影

    小説『リノベラー』が発売になりました!

    ビジネスバトンを運営するリノベーション起業研究会の奥村聡の新刊。今回は、なんと小説です!リノベーション起業のコンセプトが生まれるまでのストーリ。自分の仕事とは、これからの社会とはを考えるかたに、ぜひ!!

  • P1010520

    継げる資源リスト

    『継げる資源リスト』を作りました。事業や店舗、技術や古家まで・・・。自分なりの仕事を作っていくための“資源”が掲載され、バトンがつながれるようになることを目指しています。掲載は無料です。継げる資源の情報をおよせください!

  • 図1

    岡山県美作で仕事づくりとに移住がテーマにイベント開催

    「自分で仕事を作れるようになる」「新しい自分の居場所をつくる」・・・こんなゴールを目指して8月29日と30日にイベントを開催します。詳しくはこちらをご覧ください!

  • IMG_6480

    ソーシェア2周年記念パーティー

    2月14日、モトマチ6丁目商店街にできたTuKuRu(ツクル)でNPO法人ソーシェアさんの2周年記念パーティーが開催されました。奥村はトークゲストとして登壇です。

  • P1010649

    神戸の岡本に小さなシェアハウスを作ることになりました! こちらのフェイスブックページに、完成までの経過と町の魅力をお伝えしていきます。岡本の上質で気持ちの良い暮らしを味わっていただきたいです。

     

  • 1408849627324

    神戸リノベーション起業研究会スタート!

    明けましておめでとうございます! 本年は『リノベーション起業』の具体的な促進に努めてまいります。事業の引継ぎや街づくりに興味のある方、1月15日の神戸でのキックオフミーティングに是非!!

  • 1418370318981

    『「他力資本主義」宣言』が出版されます!

    リベルタ学舎湯川カナの『「他力資本主義」宣言(徳間書店)』が完成!もう自己責任なんて言ってられない時代が来るから力を借り合って生きましょうという本です!奥村が企画と編集協力。書店には12月15日ごろから並びます。



徳間文庫発行『リノベラー!:司法書士・菅野文秋の会社救済コンサルティング』



ミシマ社企画編集・ソシム社発行『今ある会社をリノベーションして起業する~小商い“実践”のすすめ』


マグネットミーン
1913920_1098542950156445_1829189938657334916_n
IMG_0519_20150305235237752
PC234690