継げる.ocm 継承メディア BUSINESS BATON

実録、社長に捨てられた!?スタッフたち~捨てたのは私です~

  • [レポート]

「残される社員のことが心配だ」

M&Aや社長交代の場面で
こんなセリフを吐く社長は
たくさんいます。
でも実際のところ、
当の社員たちは
どう思っているのでしょうか?
そんな本音を聞いてみるこの企画。
Tさん(30代前半男性)と
Aさん(30代前半女性)に
来てもらいました。
IMG_4760
▲Tさん(左)と、Aさん(右)

お二人がいた会社は
他社への事業譲渡が行われ、
あるとき突然雇い主が代わりました。
当時のことを語っていただきましょう。

そして、何を隠そう、
この二人を事業譲渡前まで雇用していたのは、
記者の私、奥村なのです。
ある意味、社員を捨てた男です。
今日はどんな話の展開になるのでしょうか・・・

 

◆現場と経営者の間には大きなギャップがある!

平成21年9月1日、
僕が経営していた事務所は
業界大手に吸収されました。
事業譲渡で経営権を手渡し、
僕は自分で一から作った会社を去ったのです。

その頃の様子を聞いてみたら、
Aさんはこう語りました。
「一番印象的だったのは、
朝出勤したら知らない人たちが
会社で作業をしていて驚いたこと。
事態が飲み込めませんでした・・・」と。
このコメントから
「スタッフを驚かせてはダメですよ」と、
読者の皆さんは僕のことを思うかもしれません。

でも、なんですよ。
Aさんの「知らない人たち」というのは、
システム統合の準備のために譲渡先から
派遣されてきた方々なのです。
当然、それまでには事業譲渡は決まっていて、
従業員にも伝えていたはずなのです。
なのに、Aさんは
「事態が飲み込めなくて驚いた」と。。。

トップの僕からすると、
十分に意味や流れを伝えていたつもりでした。
しかし、現場には思ったように
伝わっていなかったということです。

IMG_4754
▲川越の地ビール

この一件のみならず、
今回話を聞いてみて、
経営者と従業員の間では
大きな感覚のギャップがあるものだと
改めて気づきました。

たとえば、僕が「他社に事業譲渡する」と、
みんなに伝えた後の反応です。
Tさんは
「他の人が引き継ぐって・・・
そんなのありえるの?」
と、
ずっと半信半疑でいたそうです。
また、Aさんは
「自分が驚いて呆然としている間に、
あれよあれよと話が進んでしまった」
と。
それこそ社長が代わって、
働きながら少しずつ
腑に落ちていったようです。

こちらとしては、
事業譲渡を決断する前からずっと悩んで、
みんなに
「場合によっては事務所をやめるかも」と
かなり前から伝えていたつもりで・・・
トップの考えや感情は、
自分で思っているよりも
全然伝わっていないものなのですね。

 

 

◆会社が代わることへの期待と不安

事業譲渡の前はどんなことを考えていたか?
聞いてみました。

Tさんは「なるようにしかならない」と、
状況を見守る姿勢だったようです。
一方のAさんは
「先行きが不安で暗くなってました。
でも仕事があるから、
やらないわけにいかないし」
と、
結構ネガティブに捉えていたようです。

「もしかしたら転職先を
探していた人もいたかもしれませんね」
とTさんは当時を思い出して語ります。
それでも、当時のスタッフは全員残って
新しい雇用主に雇われました。
一人も欠けることなく引き継げたのは、
どうしてでしょうか?
「どこか運命共同体だという意識があった」
と、二人は言います。

IMG_4752

でも、たぶんそれだけじゃないのです。
僕は裏でみんなに
「次の会社は今より悪いかもしれないし、
良いかもしれない。
実際に経験する前から
あれこれ考えても分からないから、
そのまま残ってみたら?
チャンスかもしれないよ」
なんて話をことあるごとにしていたのです。
(策士と呼んでください)
事業譲渡をしたものの、
社員がみんないなくなってしまったら
シャレにならないですからね。
これが大人のやり口です(笑)
ズルかったかもしれませんが、
本当にそう思っていたのも事実です。

あとは事業譲渡の
相手も良かったのでしょう。
「最初はどこの誰だかさっぱり分からない、
という状況でしたが、
調べてみるとウチよりずっと大きいし、
しっかりとした経営をしてそうだ」
とTさん。
少しずつ不安よりも
期待が大きくなったといいます。
僕も、意図的にそういう相手を選びました。

 

◆お客さんにどう説明していいか分からない!

事業譲渡の後で
困ったことはなかったのでしょうか?

「お客さんにどう説明していいか
分からなくて困った」
とAさん。
「だって、会社の中にいる自分だって
よく意味が理解できてないのですから(笑)」
とのこと。
IMG_4749

それでもお客さんから
苦情を言われることはあまりなく、
むしろ、お客さんから
助けてもらったそうです。
「いろいろ気を使ってくれたり、
いつもよりもお仕事を
紹介してもらえたかもしれません」
と。

ちなみに
「奥村さん(僕)がどうなるか心配する
取引先の方も結構いました」
とのこと。
従業員にクーデターを起こされたとか、
経営破たんにより身売りした、と。
僕の社長交代は、
追い込まれて“やむを得ず”の行動だと
思った方もいたのかも知れませんね。

自分としては、
自主的に前向きなリセットを
試みたのですが・・・
社長を辞めるといっても年齢的に若く、
M&Aがまだ身近でない状況では、
そう思われても不思議はありません。

 

◆やっぱり“人”の問題

社長が交代するときに怖いことの一つに、
それまでの顧客や取引先から
切られることがあります。
しかし、幸いにもウチの場合、
そういったことがあまりなかったようです。

その理由は、相手と良好な関係を
築けていたことがひとつ。
もう一つは、お客さんたちが
トップの僕じゃなく、
スタッフに付いていたからだと思っています。
スタッフがお客さんたちから
高く評価されていたのです。
実際に事業譲渡後、
僕の会社出身のスタッフの優秀さを
譲渡先からほめられるケースも
たくさんありました。

どうやって優秀な人材を育てたのか
お教えしましょうか?
実は・・・
僕がほったらかしていたら、
勝手に学んで成長してくれました(苦笑)
社員教育なんて
たいそうなことはしていません。

ただ、自分の手柄ではないにせよ、
元のスタッフたちのことが褒められることは、
最高にうれしいことでした。
自分のやってきた経営については
問題が山積みでした。
それでも、その言葉を聞けると
「やって良かった」と
肯定する気持ちになれました。


IMG_4748

「やっぱり“人”ですね」
Tさんはしみじみ語ります。
事業譲渡から数年が経ち、
退職して別の道を歩むことを決意した
元スタッフがいます。
一方で、そのまま残っている
スタッフもいます。

その人が新しい環境になじめるか、
別々だった組織の間で統合が進むか。
さらには、お客さんが
引き続き支持してくれるか。
結局は人の問題だということです。

それは、トップに対して
「どう人と接してきたか?」
が問われていることを意味します。
そして、その試験の結果は、
社長交代の場面で分かるのです 。

お二人とも、ありがとうございました!

 

BB編集部だより

  • FireShot Capture 11 - 『事業承継・廃業相談室』社長交代から後継者さがし、相続、事業譲渡まで – 社長のおくりびと奥村聡が事業_ - http___syoukei-lab.com_

    事業承継・廃業相談室を開設!

    新サイトの『事業承継・廃業相談室』をオープンしました!
    子供から第三者への承継、社長の相続、廃業と・・・会社経営の出口の場面のリアルなところをお伝えできればと思っています。
    (奥村)

     

  • 12625871_675680302535743_681456829_n

    2月20日の赤穂イベントが朝日新聞に

    2月20日に開催される、僕らの「出張例会と赤穂ツアー」の紹介が朝日新聞で掲載されました。他の地域と濃く交われる機会です。参加いただいた方に何か新しいことが生まれる機会になりますように。

  • P1250557

    空き家、空き店舗について講演

    奥村は、不動産業者さんの集まりで講演をさせていただきました。「街の個性を守る」ことをお願いしてきました。どこの街も同じ風景になりつつあるなか、できるだけ今あるものを活かしていくことが大切ではないでしょうか。

  • リノベラー!書影

    小説『リノベラー』が発売になりました!

    ビジネスバトンを運営するリノベーション起業研究会の奥村聡の新刊。今回は、なんと小説です!リノベーション起業のコンセプトが生まれるまでのストーリ。自分の仕事とは、これからの社会とはを考えるかたに、ぜひ!!

  • P1010520

    継げる資源リスト

    『継げる資源リスト』を作りました。事業や店舗、技術や古家まで・・・。自分なりの仕事を作っていくための“資源”が掲載され、バトンがつながれるようになることを目指しています。掲載は無料です。継げる資源の情報をおよせください!

  • 図1

    岡山県美作で仕事づくりとに移住がテーマにイベント開催

    「自分で仕事を作れるようになる」「新しい自分の居場所をつくる」・・・こんなゴールを目指して8月29日と30日にイベントを開催します。詳しくはこちらをご覧ください!

  • IMG_6480

    ソーシェア2周年記念パーティー

    2月14日、モトマチ6丁目商店街にできたTuKuRu(ツクル)でNPO法人ソーシェアさんの2周年記念パーティーが開催されました。奥村はトークゲストとして登壇です。

  • P1010649

    神戸の岡本に小さなシェアハウスを作ることになりました! こちらのフェイスブックページに、完成までの経過と町の魅力をお伝えしていきます。岡本の上質で気持ちの良い暮らしを味わっていただきたいです。

     

  • 1408849627324

    神戸リノベーション起業研究会スタート!

    明けましておめでとうございます! 本年は『リノベーション起業』の具体的な促進に努めてまいります。事業の引継ぎや街づくりに興味のある方、1月15日の神戸でのキックオフミーティングに是非!!

  • 1418370318981

    『「他力資本主義」宣言』が出版されます!

    リベルタ学舎湯川カナの『「他力資本主義」宣言(徳間書店)』が完成!もう自己責任なんて言ってられない時代が来るから力を借り合って生きましょうという本です!奥村が企画と編集協力。書店には12月15日ごろから並びます。



徳間文庫発行『リノベラー!:司法書士・菅野文秋の会社救済コンサルティング』



ミシマ社企画編集・ソシム社発行『今ある会社をリノベーションして起業する~小商い“実践”のすすめ』


マグネットミーン
1913920_1098542950156445_1829189938657334916_n
IMG_0519_20150305235237752
PC234690