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職人になろう!『天草更紗』編 ―途絶えた技を蘇らせて―

  • [バトンチャンス]

「職人になりたい!」
「ものづくりに携わりたい!」
という声を耳にします。
私たちのメディアとしても、
それが実現すればうれしいのですが
でも、実際どうやったら、
職人になれるのでしょうか?

そこで「職人になろう!」シリーズを
スタートさせることにしました。
職人さんから、そのお仕事や、
職人へのなり方をお聞きしていきます。

 

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第1回目は熊本県天草の伝統的な染物
『天草更紗』を継承されている
中村いすずさんにお話をお伺いしてきました。
素朴な疑問を
どんどんぶつけてみたいと思います。

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▲天草更紗はどこかエキゾチックな柄です

 

秋山:中村さんは『天草更紗』
を継承された職人さんとお伺いしています。
職人になられた経緯は
どういったものだったんですか?

中村:『天草更紗』は
江戸時代から復興しては途絶え、
また復興しては途絶えの繰り返しで、
昭和の半ばを最後に作り手がいなくなりました。

10年前でしょうか、
市長と当時の文化協会会長から
「復興してほしい」と依頼されて、
いろいろと考えた結果、
引き受けることにしました。

秋山:市長と文化協会の会長から!?
結構なプレッシャーですね。

中村:そうですね。
自分にできるだろうかと思いましたが、
誰かがやらないと天草更紗が
このまま消滅してしまうと思い、
使命感を持ってがんばるしかないと
覚悟を決めました。

秋山:市長からの依頼ということは、
サポートはあったんですか?

中村:サポート体制はありませんでしたね。
当時は、とにかく天草更紗を復興しなければ
という想いでいっぱいで、
夢中で動いていたので、
そこまで気がまわりませんでした。
今考えると詰めが甘かったですね。

秋山:では指導者もいない中で、
どうやって取り組んでいったのですか?

中村:それこそもう試行錯誤の繰り返しでしたね。
以前に郷土史家や新聞記者の方から
いただいていた資料や昔の天草更紗の見本を参考に、
型おこしをしました。
誰も教えてくれないから、
自分の出来る範囲でやるしかない、
といった感じで。

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▲中村さんが参考にしたという古い布です

 

秋山:天草更紗を復活させて今に至るまでに、
大変だったことは?

中村:まずは資金面ですね。
何もないところから始めることは、
思った以上にお金が必要でした。

それから伝統あるものの制作を始めるにあたって、
最後に天草更紗を染められていた方のところへ
ご挨拶に伺いました。
その方は昭和の中頃まで続けられていたんですが、
もうお亡くなりになられていて、
奥様にお会いする形になったのですが、
初めはお会いしていただけなくて・・・。

秋山:えっ、どうしてですか!?

中村:その職人さんは、
昭和40年代頃に天草更紗の制作を
お辞めになられたのですが、
そのいきさつが少し関係しているのでしょう。

当時、外部の業者や染織家が天草更紗を作り始め、
勝手に商標登録などを行ってしまったことで、
天草更紗を染めることができないと言われたり、
時代的にもプリント商品で溢れだしてきて、
続けられなくなったんだそうです。
商標登録は後で調べてみたら、
ニセのものだったようで・・・。
私が会いに行ったことで、
そうした過去を思い出させて
しまったのかもしれません。

秋山:それからどうなったんですか?

中村:2年くらい通い続け、
ようやく想いが伝わりました。
周りの方々が好意的に
間をとりもって下さったおかげですね。
奥様の
「これからはあなたの更紗をやっていいんですよ」
という言葉が今でも忘れられません。

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秋山:認めてもらうのも大変なのですね。
では話題を変えさせていただきまして。
職人としてどんなときに喜びを感じますか?

中村:やっぱり綺麗に染め上がった時は
本当に嬉しいです。
更紗の柄を見ると
歴史の中に入ったような感覚がするんです。
ある作品の中には、
ポルトガルやスペインの宣教師が
天草にもたらした南蛮文化の古楽器や食物、
彼らが天草に着くまでに出会ったであろう
動物や植物が描かれています。
それらを改めて見るとロマンを感じます。

秋山:天草更紗の柄って特徴的ですよね。

中村:そうですね。
天草は安土桃山から江戸時代の
南蛮貿易が盛んだった時代に、
ポルトガル人宣教師が来島したことによって、
西欧の文化がたくさん入ってきました。
なので先ほどもお話ししたように、
西欧人が天草に伝えた文化と
天草の地の文化が融合したような柄が特徴です。

 

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▲柄には象まで描かれています

 

秋山:いやぁ面白いですね。
立ち入ったことを聞いてしまいますが、
資金面はどうなんですか?

中村:それは、それは大変でした。
助成金をいただく方法もわからなかったので、
それこそ地道にやっていきました。

伝統的な更紗の染物だけでなく、
色使いを鮮やかにしたり、
オーダーメイドで洋服を作ったりして、
なんとか続けてきました。
伝統を大切にしながらも、
時代や要望に合ったものを作り続け、
認知していただくことを
目標にしながら制作を行っています。

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▲先ほどの柄を色鮮やかに仕上げたもの

 

秋山:やはり難しいところがあったんですね。
そういった状況から脱却するため、
他に取り組んだことなどありましたか?

中村:今後の展開をどうするかと考えたときに、
もっとビジネス的なところも
考えていきたいと思ったんです。
そこで天草市が主催し、
京都大学大学院が連催している
起業塾に参加することにしました。

秋山:起業塾ではどういったことを
学ばれたんですか?

中村:ビジネスモデルについてですね。
どういった顧客に対してどう売り出していくのか、
といったことです。
支援してもらえるようになるために
「プレゼンで1位をいただかなければ」と、
心の奥で祈りながら勉強しました。

秋山:職人の技術を極めるのも大変なのに、
プレゼンの技術までも
磨かないといけないなんて・・・。
それで結果は?

中村:おかげさまで1位に
選んでいただきました。
天草更紗を
「天草と色んな人を結ぶツールにしたい」
という想いが伝わったんだと思います。

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▲染めの様子です

 

秋山:すごい!おめでとうございます!!
プレゼンのときの資料を拝見すると、
後継者の育成なども考えておられるようですが、
もし「天草更紗を継いでみたい」
という人がいたら
一緒に職人として働けるものなんですか?

中村:もちろん!大歓迎ですよ。
スタッフ不足で悩んでいるくらいなので、
ぜひ一緒に更紗をつないでいきたいです。

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秋山:それは全国の職人希望の方にとって朗報ですね。
では最後に今後の展望をお聞かせ願いますか?

中村:天草の伝統工芸が
東京や京都などと違うところは、
離島であり、資源が乏しいところだと思います。
でも資源がないなら、
どう工夫してやっていくかを考えていくことが
自分たちの使命だと思っています。

あとは「伝統」という言葉にあぐらをかかない、
ということですかね。
伝統を受け継ぐだけでなく、
いかに今の時代に響くものへと変える柔軟性が
重要になってくると思います。
今後はもっと色んな展開を企画して、
多くの方に天草更紗を知っていただけるよう、
挑戦を続けていきたいと思っています。

秋山:「伝統」にあぐらをかかない
という姿勢に共感します。
今日はありがとうございました!

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【取材後記】

中村さんのお話いかがでしたか?
なりわい承継メディアでは、
これからの天草更紗の動向も
ウォッチしたいと思っています。
中村さんの素敵な娘さんが
そのお手伝いをしてくれるかも・・・
皆さん楽しみにしていてくださいね!

 

《天草更紗 染元 野のや》
HP:www.sarasa-nonoya.com
お問い合わせ:info@sarasa-nonoya.com

BB編集部だより

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