継げる.ocm 継承メディア BUSINESS BATON

《実録》「会社をたたみます・・・」銀行集会と経営者保証ガイドライン

  • [レポート]

紺色のスーツに身を包む恰幅のよい社長。
白髪頭を七三に分けた60代後半。
地元の団体の理事などをいくつも兼任している。

社長はいつになく、
小さな声でボソボソと話をしている。
そんな話を聞いているのか、いないのか。
7名の銀行員たちは
ただ下を向いて資料ばかりを読んでいる。

関西のある中小企業F社の会議室。
資金が枯渇し、
これ以上の会社継続は不可能となった。
債権者の銀行を集め、
会社清算の方針と今後の処理方法を伝える集会だ。
僕は事業存続のアドバイザーとして、
弁護士の先生とともに同席している。

IMG_5228

この銀行集会のレポートの目的は二つある。
ひとつは、銀行に「ごめんなさい」をする場面は
どんな様子なのか、を伝えるため。
もうひとつは、
経営者保証に関するガイドライン』が定められたことで、
会社の連帯保証人(社長や第三者保証人)の救済は
何か変わったのか、を伝えるためである。

 

「すいませんでした!」
突如声が大きくなり、
社長の話は終わった。
無念さをにじませつつ、
銀行員たちへ謝罪を伝えた。

次に、息子である専務が、
経営不振に陥った背景と、
債権のための努力とその結果を説明する。
専務の話には、
メイン銀行に媚びる表現が多かった。
後ろめたさを感じているためだろう。
一方、とっぽいメイン銀行の支店長は、
ブスっとしながら資料ばかり見ている。

さかのぼること1週間、
集会の開催を知らせるために手紙を郵送した。
するとその支店長から、
「こんな紙切れ一枚で清算とはなにごとだ。
すぐ銀行へ来い」と、
ケンカ腰で電話がきたそうだ。

電話を受けた専務には、
事前の打ち合わせのとおり
「債権者を平等に扱う必要があるから、
個別に話をしないよう弁護士から言われている」
と答えてもらった。

「もうお金は返せません」というのだから、
罵声が飛び交う場面想像する方が多いかもしれないが、
僕の知る範囲では、
こういう反応をする銀行は珍しい。
(一般の会社や個人は別)
銀行は、こうなったら粛々と
処理するしかないことは分かってるからだ。
同様に、会社サイドもまな板の上の鯉になって
粛々とやればいいと思う。

 

 

専務の説明のあと、僕と弁護士で、
今後の処理方針について説明した。

資産をスムーズかつ高値で売却し、
債権者への返済をより増やすこと。

事業は継続しながら、
他社に引き継いでもらうこと。

そして、最終的に会社は
破産等できっちりけじめをつけること。

とくに僕たちが重視しているのは
②事業の継続である。
まだやれる事業ならば、
生かすことで雇用や取引先を残せるからだ。
このプラン提案したとき社長は
「自分が破産してすべてを失うことは仕方ない。
でも、事業だけでも残せたら、
こんなにありがたいことはない。
人生を費やして作ってきたものですから」
としみじみ語っていた。

 

P2171613

 

「資産の換価にはどれぐらい時間がかかるか?」
などの質疑応答のあと、
こちらから連帯保証人のことについて
「免除してもらえないか?」
と話を振ってみた。

つい最近ガイドラインが定められ、
会社をたたむ場合でも、
「社長の華美ではない自宅なら残せるようになる」
というニュースも流れたところである。

また、中小企業の場合、
社長が会社の借金を連帯保証するのは普通のこと。
しかし、そのほかの第三者保証人については、
「やりすぎだ」と是正を求める流れも
強くなってきているのだ。
今回のF社の場合、社長のほかに、
息子の専務と社長の弟(会社には無関係)も
連帯保証人となっている。

 

そこで、
専務の連帯保証を外してもらえませんか?
専務は個人資産もすべて取り崩して
会社の運転資金で使ってしまっているので、
破産させたところで債権者に得はないですよね?」
という話をした。

しかし、
「あくまでウチ銀行の見解ですが、
いくらガイドラインができたところで
『ハイそうですか』と連帯保証を
外すことはできません。
社内で定められた要件を
クリアしていなければダメなので、
F社の場合は無理です」
と、ある銀行の支店長。

そうであれば、それなりに資産を持っている
社長の弟の連帯保証なんて
外してもらえるわけもない。
結局、連帯保証人については、
社長の弟への催促等をしばらく待ってもらう
レベルの条件しか引き出せなかった。

そもそもガイドラインは
法的な強制力はないもの。
債権者の利益も考えると、
会社側に都合がいい要望が
そう認められるわけもないのだろう。

今回は、話を切り出したのが
終末の段階になった点も難しかった。
いずれにせよ、ガイドラインが
機能するようになるのはまだ先のようだ。
期待している会社も多いだろうが・・・

 

 

約1時間30分で集会は終了した。

社長や専務にとっては、
はじめてのことで不安も大きかっただろうが、
混乱もなく無事に終わりホッとした様子だ。

「どうするか半年悩み続けました。
小さな街だから噂がすぐに広がるだろうとか。
女房がかわいそうだとか。
いろいろ引っかかって・・・。
しかし、こうするしかなかったのでしょう」と、
社長は最後に語った。

(おわり)

BB編集部だより

  • FireShot Capture 11 - 『事業承継・廃業相談室』社長交代から後継者さがし、相続、事業譲渡まで – 社長のおくりびと奥村聡が事業_ - http___syoukei-lab.com_

    事業承継・廃業相談室を開設!

    新サイトの『事業承継・廃業相談室』をオープンしました!
    子供から第三者への承継、社長の相続、廃業と・・・会社経営の出口の場面のリアルなところをお伝えできればと思っています。
    (奥村)

     

  • 12625871_675680302535743_681456829_n

    2月20日の赤穂イベントが朝日新聞に

    2月20日に開催される、僕らの「出張例会と赤穂ツアー」の紹介が朝日新聞で掲載されました。他の地域と濃く交われる機会です。参加いただいた方に何か新しいことが生まれる機会になりますように。

  • P1250557

    空き家、空き店舗について講演

    奥村は、不動産業者さんの集まりで講演をさせていただきました。「街の個性を守る」ことをお願いしてきました。どこの街も同じ風景になりつつあるなか、できるだけ今あるものを活かしていくことが大切ではないでしょうか。

  • リノベラー!書影

    小説『リノベラー』が発売になりました!

    ビジネスバトンを運営するリノベーション起業研究会の奥村聡の新刊。今回は、なんと小説です!リノベーション起業のコンセプトが生まれるまでのストーリ。自分の仕事とは、これからの社会とはを考えるかたに、ぜひ!!

  • P1010520

    継げる資源リスト

    『継げる資源リスト』を作りました。事業や店舗、技術や古家まで・・・。自分なりの仕事を作っていくための“資源”が掲載され、バトンがつながれるようになることを目指しています。掲載は無料です。継げる資源の情報をおよせください!

  • 図1

    岡山県美作で仕事づくりとに移住がテーマにイベント開催

    「自分で仕事を作れるようになる」「新しい自分の居場所をつくる」・・・こんなゴールを目指して8月29日と30日にイベントを開催します。詳しくはこちらをご覧ください!

  • IMG_6480

    ソーシェア2周年記念パーティー

    2月14日、モトマチ6丁目商店街にできたTuKuRu(ツクル)でNPO法人ソーシェアさんの2周年記念パーティーが開催されました。奥村はトークゲストとして登壇です。

  • P1010649

    神戸の岡本に小さなシェアハウスを作ることになりました! こちらのフェイスブックページに、完成までの経過と町の魅力をお伝えしていきます。岡本の上質で気持ちの良い暮らしを味わっていただきたいです。

     

  • 1408849627324

    神戸リノベーション起業研究会スタート!

    明けましておめでとうございます! 本年は『リノベーション起業』の具体的な促進に努めてまいります。事業の引継ぎや街づくりに興味のある方、1月15日の神戸でのキックオフミーティングに是非!!

  • 1418370318981

    『「他力資本主義」宣言』が出版されます!

    リベルタ学舎湯川カナの『「他力資本主義」宣言(徳間書店)』が完成!もう自己責任なんて言ってられない時代が来るから力を借り合って生きましょうという本です!奥村が企画と編集協力。書店には12月15日ごろから並びます。



徳間文庫発行『リノベラー!:司法書士・菅野文秋の会社救済コンサルティング』



ミシマ社企画編集・ソシム社発行『今ある会社をリノベーションして起業する~小商い“実践”のすすめ』


マグネットミーン
1913920_1098542950156445_1829189938657334916_n
IMG_0519_20150305235237752
PC234690