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嫌いで仕方なかったパン屋を継ぎました。【赤穂市・あこうぱん】

  • [レポート]

店の前の駐車場は満車。

空くのを待っている車もあります。

店内のレジには行列ができ、
トレーにパンの山を積み上げているお客さんもいます。

赤穂で人気のパン屋さん『あこうぱん』のオーナー、
パン太郎こと鈴木誠さんにお話をお聞きしました。

それにしても店内にパンの種類が多い・・・

 

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▲あこうぱんの鈴木さんです

 

  • 嫌いだった実家のパン屋

 

「昔はパン屋を継ぐなんて考えたこともありませんでした。
実家がパン屋であったことが本当に嫌でした。

学校給食のパンを作っていたのですが、
量や時期の制限が厳しくて、家族全員疲れ切っていてて。
朝早く起きて仕事をするけど、
誰のために作っているのかわからなくなってしまい・・・

 

学校から指定された成分では美味しいものなんてとてもできなかったのです。
小学校のころは、友達が『またパンかよ』ってパンを捨てたり、
机の中に放置したり。
それでいじめられたこともありました。
だから、何でウチはパン屋なんだよ・・・って」

 

ご両親も本人も、パン屋は継がないほうがいいと思っていたそうです。

そして、家から離れたいという思いで、
鈴木さんは北海道の帯広畜産大学に入学することになりました。

 

「酪農なんてまったく興味がありませんでした(笑)

ただ遠くに行きたかっただけ。

だから、マジメに勉強することもなく、バイトして、
部活して、酒飲んで、何度も留年して・・・」

 

そんな鈴木さんに大きな転機が訪れます。

バイト先のレンタルビデオ屋で出会った今の奥さまが
大のパン好きだったのです。

好きな子に自分が作ったパンを食べてもらおうと、
その向かいのパン屋さんに
「働かせてもらいたい」
と頼みに行きました。

 

「その時パン屋に入って、ぶわっと鳥肌がたちました。

粉をこねる音や、小麦の臭いがして。

あれだけ嫌いだったパン屋に運命のようなものを感じました」

 

「おいしい」って言ってもらいたくて、
彼女のためにパン屋になることを決めました。

 

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▲看板の前で記念撮影

 

 

  • 修行と挫折の日々

 

結婚して奥さまと兵庫にもどり、
神戸の有名店で6年修行をしました。

その後、別の店に移ったとき挫折が待っていました。

 

「その店のパンに対する哲学のようなものについていけませんでした。

店内の会話はフランス語だし。

修行を重ねて自分はできると自負があっただけに、
通用しない自分へのショックが大きかったです。

帰りの三宮の駅のホームで
『このままホームに落ちたら死ねるな』
って思ったことも」

 

鈴木さんは、今思えばウツだったと語ります。

 

「もうパンが作れなくなって、家に引きこもるようになってしまい、
父親が『いいかげんにしろ』って怒っていました。

そんなときに、嫁さんが
『まこちゃん(鈴木さん)が作ったパンが食べたいわ』って。

その一言で起き上がることができました」

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パン屋を継いだ鈴木さん、
しかし今のような人気店とはかけ離れた姿だったようです。

 

「売上は下がり、2年間ぐらいは自分の給料も取れませんでした。

とんがったパンばかりを作ろうとしていて、
ある人から『パンのことが分かってないんじゃない!?』と、
ぐさりと言われて泣き崩れたこともありました。

当時の僕にとってパン作りは自分を表現するためのものだったんですね。

技術や知識をひけらかすための。

一部のパンマニアに食べさせるようなパンばかりを作ろうとしていました」

 

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  • パンの種類が増えていく

 

「あるとき赤穂の友人がこう言ってくれました

『お金がないって嘆くけど、ただの紙切れだぜ。
お前はパンを作るんだから、パンで人を喜ばせろよ』

それから考え方ががらりと変わりました。

パンは自己表現の道具じゃなくて食べ物です。

そのパンで喜んでもらおう、と。

だから子供が『メロンパンない?』って言ってたら作るし、
おばあちゃんが『ツイストパンが欲しいって』聞けば作りました。

『できるよ、1週間後に店に出しておくから!』
という感じで」

 

こうしてパンの種類がどんどん増えてしまったそうです。

通常は多いと言われるお店でも100種類ぐらいとのことですが、
あこうぱんでは、土日のピークには250種類ほどのパンが並びます。

かつて商工会議所から派遣されてきた経営コンサルタントに
「パンの種類が多すぎてダメ。経営する気あるの?」
と怒られたこともあるそうです。

 

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「ウチの店のコンセプトは街のお母さんみたいなパン屋さんです。

お母さんは、子供が『お腹すいた!』って帰ってきたら
あたりまえのようにご飯を出しますよね。

産地や作り方のウンチクを偉そうに語ったりしないし、
子供のために疲れた顔もしないはず。

誰にでもお店に来てもらいたいし、
パンを介してコミュニケーションをとらせてもらいたいのです」

 

スタッフのみなさんがカジュアルな服装をしているのも
話しかけてもらいやすいようにするためだとか。

こんな根底にある想いが素敵なパン屋さんを作っているのですね。

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最後に、これから新しいことにチャレンジしたい方への
メッセ―ジをいただきました。

「誰だってはじめてのことをやるのは怖いですよ。

僕だって怖いです。

でも振り返ってみれば、そうやっていくつも扉を開けてきたはず。

無難なだけの人生よりも、
自分がドラマや映画の主人公だったとして、
観客がワクワクして応援したくなるような生き方をしたくないですか。

人生、そんな簡単にゲームオーバーにはならないものですよ」

 

鈴木さん、ありがとうございました!!

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あこうぱん

〒678-0233
兵庫県赤穂市加里屋中洲6-24

BB編集部だより

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